キャリアマップとは? 職業能力評価基準やキャリアパスとの関連性も解説

一昔前の日本では、採用した従業員を入社から定年まで雇用し続ける、終身雇用制度が一般的でした。しかし、現在の日本社会では、経済、社会情勢の大きな変化や少子高齢化等の影響により、終身雇用制度は崩壊しつつあります。
これからの時代を生き抜くためには、限定的なキャリアを積むのではなく、環境の変化に対応できる、普遍的なキャリア形成が重要視されるようになりました。
普遍的なキャリア形成を図る方法の一つに「キャリアマップ」があります。
本記事では、「キャリアマップ」の利点や見方などの基礎知識を紹介するとともに「職業能力評価基準」や「キャリアパス」との関連性についても解説します。
キャリアマップとは
キャリアマップとは、経歴や職歴を意味する「キャリア(Career)」と、地図を意味する「マップ(Map)」を組み合わせた言葉です。キャリア形成における「地図」として理解してよいでしょう。
キャリアマップでは、将来どのようなキャリアを形成していくのかを明確にすることで、どのようなスキルや資格を身に付けるべきかを具体的に把握することができます。
キャリアマップには、「職業能力評価基準」で設定された4段階のレベル区分を基にしたキャリアアップの標準的な道筋と、各レベルの習熟の目安となる年数が示されています。
ここからは、キャリアップについて以下の点を解説していきます。
- キャリアマップの利点
- キャリアマップの見方
- キャリアマップの作成・カスタマイズ方法
- キャリアマップの活用
1つずつ見ていき、キャリアマップへの理解を深めていきましょう。
キャリアマップの利点
キャリアマップを活用する利点は、キャリア形成にはどのような経験が必要で、どのような資格や技術が必要であるのかを可視化できることです。
キャリアマップがないと、キャリアを形成したくても、何をどのように頑張ればよいのかが分かりません。目指すゴールが不明瞭では、モチベーションも次第に低下してしまう可能性があります。
自分自身のキャリア形成に対する目的意識を高めるためにも、キャリアマップを活用していけば、より具体的な行動が可能となり、確実なステップアップを目指せるでしょう。
従業員個々の効果的なキャリア形成は、組織における人材育成の効率化にもつながります。
キャリアマップの見方
キャリアマップは、職種ごとの役職階層と各レベルの習熟の目安年数が分かるよう、時間軸上に展開されています。さらに、レベルアップに必要となる経験や実績、関連する資格・検定なども記載されているため、キャリア形成に必要な要素を一目で確認できます。
まずは、自分のレベルと階層をキャリアマップ上で確認し、次に目指すべきポジションまでの道筋を把握します。
その上で、各レベルの習熟までの目安年数を意識しながら、必要なスキル取得や経験の蓄積ができるよう、具体的な目標に落とし込みましょう。
キャリアマップの作成・カスタマイズ方法
キャリアマップでは、自分が勤務する企業の業務内容や役職のレベルと、職業能力評価基準のレベル区分を結び付けられます。
キャリアマップの作成には、厚生労働省が無料で提供しているテンプレートの活用がおすすめです。事務系職種および16業種の中から、自身に見合ったテンプレートをダウンロードしましょう。
ただし、厚生労働省が提供しているキャリアマップは、各業界の標準的な基準です。そのまま使用することも可能ですが、有効活用するためには実状に合わせたカスタマイズを行いましょう。
例えば、各レベルをクリアする目安年数は、勤めている企業の規模や自分の年齢などによって異なりますので、状況に応じて適切な目安年数を設定します。
キャリアマップに自社に存在しない項目がある場合は削除し、不足している項目は追加します。必要なカスタマイズを行い、自分専用のキャリアマップを作成しましょう。
参照:厚生労働省「職業能力評価基準について|キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」
キャリアマップの活用
従業員のキャリア形成の指針となるキャリアマップは、企業の実践的な人材育成にも活用可能です。
キャリアマップを企業内で共有することで、上司や同僚との間で、キャリア形成に関するコミュニケーションが活性化されるでしょう。習得すべきスキルや積むべき経験についての情報が共有されれば、周囲もサポートを提供しやすくなります。
従業員の効率的な技術習得により、企業内での効果的な人材育成の実現も期待できます。
職業能力評価基準とは
キャリアマップでのレベル設定に使用されている「職業能力評価基準」とは、厚生労働省が公表している、仕事をこなすために必要な能力の基準です。
具体的には、仕事を遂行するために必要な知識と技術・技能、成果につながる職務行動例を、業種別や職種・職務別に整理して体系化したものです。職業能力を公平に評価する基準として、企業での人事採用や人事評価、人材育成など、様々なシーンで活用されています。
職業能力評価基準は、事務系職種9職種と、サービス業関係、製造業関係、卸売・小売業関係などの策定業種計56を網羅しています。
職業能力評価基準は標準的な基準ではありますが、キャリマップと同様に各企業で適宜カスタマイズして活用しましょう。
キャリアマップとキャリアパスの違い
キャリアマップと似た言葉に、「キャリアパス」があります。どちらもキャリア形成に関する言葉ではあるものの、それぞれの言葉が持つ意味には微妙な違いがあります。
ここでは、以下の2点について見ていきたいと思います。
- キャリアパスとは
- キャリアマップとキャリアパスの違い
それぞれの違いについて確認しておきましょう。
キャリアパスとは
キャリアパスとは、経歴や職歴を意味する「キャリア(Career)」と、道筋を意味する「パス(Path)」を組み合わせた言葉です。キャリアの道筋、すなわちキャリアパスとは「特定の企業内での昇進ルート」を可視化したものです。
キャリアパスは、企業から従業員に対して提示されます。入社した企業でどのような役職を目指すのか、昇給を実現するためにはどのようなスキルが必要なのかを明確化したものがキャリアパスです。
関連記事:パスメイク「キャリアパスとは?意味や例、キャリアパス制度について解説」
企業がキャリアパスを重視する理由
キャリアパスは、従業員だけでなく、企業からも重視されています。
キャリアパスの提示により、従業員がモチベーションを維持しやすく、優秀な人材の定着率が高まることが期待できます。また、キャリアパスによって企業の求める人物像や適性を明確にできるため、離職率増加の要因となる人材のミスマッチも回避できるでしょう。
従業員のスキルや適性が明確化できるため、適材適所の人材配置が可能となり、企業の成長や利益の最大化も期待できます。
さらには、人事評価制度の透明性の向上により、従業員の満足度を促せるでしょう。
このように、キャリアパスの提示は、企業側にも多くのメリットが得られるため、重視されているのです。
キャリアマップとキャリアパスの違い
キャリアパスは、特定の企業内での成長が前提です。よって、キャリアパスの主体は企業であり、その企業内でのステップアップに焦点を当てています。
一方、キャリアマップは、自身が目指したいキャリア形成の道筋や方向性を示すものです。キャリアマップの主体は個人であり、個人の成長やスキルの獲得に焦点が当たっています。
「自分がどうなりたいか」という個人の価値観や興味を強く反映させている点がキャリアマップの特徴であり、キャリアパスとの違いといえるでしょう。
とはいえ、キャリアマップとキャリアパスは、互いに影響を与え合う相関関係にあります。個人のキャリア形成と組織内でのキャリアアップを図るためには、両者をバランスよく活用することをおすすめします。
キャリアマップは組織の人材育成に役立つ
キャリアマップとは、厚生労働省が職業能力評価基準として設定した4段階のレベル区分を基に、キャリア形成の標準的な道筋を示したものです。
レベルごとの習熟目安年数とともに、必要なスキルや経験などが明記されているため、目的意欲が高まり、効率的かつ普遍的なキャリア形成が目指せます。
従業員ごとに必要なスキルや経験が明確になると、企業は人材育成のための方針が立てやすくなります。適切な教育プログラムや研修を実施し、人材育成の効率化が可能です。
従業員と企業の双方にメリットがあるキャリアマップは、人材確保の懸念が高まる日本社会において、重要性の高いツールといえるでしょう。
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