リスキリングとは?意味・メリット・実施方法・注意点など解説

社会人のスキルアップに向けた学習法のひとつに「リスキリング」があります。変化の激しい近年、働く人だけでなく幅広い企業で注目を集めている方法です。

本記事ではリスキリングの意味やメリット、実施方法や注意点などを解説します。具体的な学習内容にも触れているため、キャリアアップに向けた学びに興味がある方や、社内にリスキリングを導入したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。

リスキリングとは

経済産業省は「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、リスキリングを次のように定義しています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」


「リスキリング」とは、ビジネスモデルなどの変化に適応するために、社会人が仕事と並行しながら「新たなスキル」を学ぶことです。一般的には企業が主体となり、研修などを通して従業員に教育を行います。

 

参考:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

リカレント教育との意味の違い

「リカレント教育」と「リスキリング」の大きな違いは学習方法にあります。

リカレント教育は、仕事で求められるスキルを、教育機関などを通して主体的に学び直すことです。基本的に「仕事をする期間」と「教育を受ける期間」に分けて学習するため、一時的に職を離れます。

対してリスキリングは、仕事に必要な新しいスキルを、企業が提供する学習プログラムで学びます。リカレント教育とは異なり、仕事と並行しながら学習することが特徴です。

「学び直し(リカレント教育)」についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
★「学びなおし(リカレント)」

OJTとの意味の違い

「OJT(On the Job Training)」と「リスキリング」の違いは学習の目的や内容です。

OJTは、職場で上司や先輩が行う教育訓練のことで、現在の業務に必要なスキルの取得を目的としています。

一方でリスキリングは、既存業務ではなく新しい業務に対応することを目的に、新しいスキルを学びます。

リスキリングが注目されている理由

リスキリングが注目されている理由は、社会や働く環境が大きく変化しているためです。

高い専門性やスキルを持った人材を社内で育成することが急務となり、新しいスキルを学ぶ手段としてリスキリングの重要性が高まっています。

ここでは、そのような状況を生み出している背景について詳しく解説します。

DXの加速化

近年デジタル技術が急速に発展したことにより、ビジネスモデルや商材などにも大きな変化が生まれました。

このような背景の中、業務効率化や生産性向上を実現させるには、社内でデジタル革新「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を進めることが重要です。DX推進にはIT知識やスキルを持つ人材が不可欠なため、幅広い業界で人材育成が課題となっています。

働き方の多様化

現在は、リモートワーク、フレックスタイム制度、時短勤務など、さまざまな働き方が一般化してきました。働き方が柔軟になる一方で、既存の働き方や知識では対応できない業務も増加しています。

働く環境の変化に適応するためには、現場の社員が新たなスキルを身につけることが重要であり、社内での人材育成の手段として、リスキリングの注目度が高まっているのです。

リスキリングでは何を学ぶ?  

リスキリングでは、業務に必要な新しいスキルを習得します。企業や業界によって必要な学習内容は異なります。ただし、今後は幅広い業界でITやDXを推進するために次のようなスキルが特に求められるでしょう。

  • 語学
  • デジタルマーケティング・WEBマーケティング
  • プログラミング
  • UI/UXデザイン
  • データサイエンス
  • 情報セキュリティ
  • AI・機械学習

たとえば、ECサイトに注力したい場合は、WEBマーケティングやデータサイエンスなどのスキルが役立ちます。スキルを現場で活用するには、自社の商材や目的にあわせた学習内容を選択することが大切です。

企業がリスキリングに取り組むメリット

企業が積極的にリスキリングに取り組むことで、社員と企業双方に良い影響をもたらします。社員がスキルアップすることにより、社内に新しい風を吹きこむでしょう。

新しいアイデア・イノベーションの創出

社員それぞれが新しいスキルや知識を得ることで、社内に新しいアイデアが生まれやすくなります。

実践を積むことにより、従来にはない切り口で、新規事業の立ち上げや既存事業の改善に向けた施策を立案できるようになるでしょう。

イノベーションの創出によって、変化の激しい時代においても企業の存続や成長が期待できます。社内の風土を変えたい、既存事業に課題があるといった場合は、積極的にリスキリングを活用すると良いでしょう。

業務の効率化や生産性の向上

リスキリングで習得したスキルをDX推進に活かすことで、社内に新しいIT技術を導入できるようになります。

IT技術の活用により単純作業などを自動化することで、業務の効率化や人材の有効活用が実現できます。それによって空いたリソースを、新しい業務や事業に回すことも可能になるでしょう。

業務効率化により残業代などのコスト削減も可能です。このように、リスキリングは社員個人だけではなく企業全体の生産性を高めるという意味でも重要な役割を果たします。

企業の文化を維持した成長

DX推進に向けて新しい人材を大量採用する場合、社内に慣れるまでに時間がかかり、これまで企業が培ってきた理念や文化の継続が難しくなる可能性があります。

リスキリングはすでに社内で活躍する人材を対象に育成するため、企業文化を維持したまま成長することが可能です。社内の文化を深く理解している社員であれば、リスキリングで得たスキルを活かしやすいため、仕事を円滑に進められるでしょう。

人材の採用・育成コストの削減

リスキリングは、人材採用・育成コストの削減にも有効です。

DX推進のために新たな人材を採用する場合、その専門性の高さから採用コストが大きくなる傾向があります。また、OJTなどの社内教育が必要になり、一定の育成コストも発生します。

一方で、リスキリングはすでに社内の業務に精通している人材に対して行うため、新規採用コストがかかりません。一から教育するよりもスピード感を持って育成できます。

企業によるリスキリングの進め方4ステップ

リスキリングをスムーズに進めるためには、企業の課題に沿った学習内容の選定や、学習環境の整備が不可欠です。

ここからは進め方を下記の4つのステップで紹介します。

  1. 求める人材・スキルの設定
  2. 教育プログラムの選定
  3. 学習環境の整備や従業員への学習支援
  4. 習得したスキルを活用できる機会の提供

リスキリングの導入前に実際の流れを把握しておきましょう。

【STEP1】求める人材・スキルの設定

リスキリングの方向性を定めるために、求める人材とスキルを設定します。

まずは、自社の経営戦略や事業戦略に基づいて現在抱えている課題を洗い出しましょう。そのうえで課題解決のために「求める人材」と「必要なスキル」を明確にします。

課題の洗い出しを効率よく行うには、業績や社員が保有しているスキル・資格など、設定に必要な情報を可視化することが有効です。自社が求めるスキルや本人の適性を把握でき、リスキリングの対象者も見えてきます。

【STEP2】教育プログラムの選定

続いて、教育プログラムの選定です。

研修やeラーニング、オンライン講座などさまざまな種類があるため、複数の方法を用意しておくと良いでしょう。社員が自分にあうリスキリング方法を選択でき、学習しやすい環境が整います。

教育プログラムを自社で準備できない場合は、アウトソーシングの活用も手段のひとつです。社外から講師を招く、企業が提供する学習コンテンツを取り入れるなどの方法があります。

ただし、選定までに比較検討が必要になり、コストも発生することに注意しましょう。

【STEP3】学習環境の整備や従業員への学習支援

リスキリングは仕事と並行して学習するため、社員の負担にならないスケジュールや学習環境を整えることが重要です。できるだけ就業後や休日を避け、業務の一環として就業時間内に学習時間を設定します。

業務で使用しているソフトから教育プログラムにログインできるように設定する、学習履歴や進捗情報を管理できるシステムを導入するといった仕組みづくりをすることで、従業員が学習を継続しやすくなります。

定期的に1on1を行い、本人のキャリアプランとずれがないか、不便な点はないかなどを確認しながら、学習環境を整備していきましょう。

【STEP4】習得したスキルを活用できる機会の提供

リスキリングをして終わりではなく、習得した知識・スキルを実際に使える機会を提供しましょう。

具体的には、スキルを活かせる業務を現場に用意する、今後想定している事業に試験配置するなどの方法があります。

実践を積むことで学習内容をより深く理解できるため、従業員の能力向上につながります。また、実践の結果に対して効果検証を行うことも重要です。フィードバックと改善を繰り返すことで、仕事に役立つスキルになるでしょう。

リスキリング推進のポイント・注意点

リスキリングを効果的に活用するためには、社内体制の整備や社員へのフォローが重要になります。本章ではリスキリングを推進させるためのポイントや注意点を解説します。

リスキリングの目的や意義の共有

リスキリングをスムーズに進めるためには、社内の協力体制が不可欠です。業務時間内に学習期間を設ける場合は、対象の社員が気兼ねなく学習に取り組めるよう、周囲の理解がより重要になります。

実際に学習を行う従業員に向けて、リスキングの目的や必要性、メリットなどをしっかりと説明しましょう。説明会や情報発信を積極的に行うことにより、リスキリングに対する従業員の理解が深まりやすくなります。

社員のモチベーション管理

日々の忙しさや学習への抵抗感などが要因で、リスキリングに積極的でない社員もいるでしょう。また、最初はやる気があっても、だんだんとモチベーションが下がってしまうケースもあります。

リスキリングは途中で中断してしまうと効果を発揮できません。そのため、モチベーションが維持される仕組みづくりをし、学習を継続していく必要があります。インセンティブを設定する、対象者が学びたい内容を学べるようにするなど、進んで学習したくなる環境を整えることが重要です。

リスキリングで人と企業を成長させよう

社員がリスキリングを通して新しいスキルを身につけることで、業務効率化や社内のイノベーションにつながります。DXの加速化や働き方の多様化など、変化の激しい時代に対応するためにも、今後はますます重要性が高まるでしょう。

リスキリングの効果を最大化させるには、自社の目的や商材にあう学習内容の選定や、社員が学習しやすい環境づくりが重要です。社内で協力体制を構築し、人と企業の成長にリスキリングを推進し、企業を成長させていきましょう。

 

 

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