バックキャスティング思考とは?やり方やメリットをわかりやすく解説

企業や政府、個人が課題を解決する際に用いる「バックキャスティング(Backcasting)思考」が、昨今注目を集めています。

バックキャスティング思考とは、理想とする未来の目標を先に設定し、そこから逆算して解決策を探る考え方です。

本記事では、バックキャスティングとはどういった思考なのか、具体的な考え方、活用事例、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。

ビジネスパーソンが10年後、20年後のキャリアプランを立案する際にも、バックキャスティング思考は有効なアプローチ方法ですので、ぜひ参考にしてください。

バックキャスティング思考とは

バックキャスティング思考とは、「未来になりたい姿・あるべき姿」を起点とし、そこに向かって進む道を逆算して現在の戦略を探る方法です。1970年代における環境問題の解決策に用いられた言葉で、以降広く知られることになりました。

フォアキャスティング思考との違い

課題の解決策を模索する思考方法に「フォアキャスティング(Forecasting)思考」があります。

未来から逆算して、現在の戦略を考えるバックキャスティング思考とは異なり、フォアキャスティング思考は、現在を起点として未来を予測する考え方です。

フォアキャスティング思考は起点が現在であるため、現状の課題に気づきやすく短期的な事案や緊急性のある目標実現に適しています。

一方で、現在の延長上に将来を描く思考方法であるため、現状と大きく異なる未来を創造し達成することは難しくなります。

フォアキャスティング思考とバックキャスティング思考は、シーンによって使い分けることで、実現したい未来の達成確率を上げることが可能です。

身近なバックキャスティング思考の活用事例

政府の取り組みやビジネスの未来設計(DX推進や組織改革など)において、バックキャスティング思考は広く活用されています。

例えば、近年関心が高まるSDGs(持続可能な開発目標)は、バックキャスティング思考を基に作成されました。

SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、17のゴール・169のターゲットから構成されています。

地球上の「誰一人取り残さない」理念を達成するためには、バックキャスティング思考の根本である未来洞察(目指す未来から逆算して現在の戦略を考える思考)が重要です。

また、自動車関連企業のCO2削減や、製造関連企業における数年後の売上・営業利益率の目標作成にもバックキャスティング思考が用いられています。

バックキャスティング思考のメリット

バックキャスティング思考は、未来に向けた政府の取り組みやビジネスの長期的な計画において効果を発揮するだけではなく、自身のキャリアパスを考える際にも有効です。

ここからは、バックキャスティング思考を取り入れることによる2つのメリットを、具体的に解説していきます。

正解が見えない問題・テーマに前向きに取り組める

バックキャスティング思考は、誰も解決策を持たない問題やテーマに対してアプローチするのに有効な考え方です。

未来に焦点を当て目指すべき姿を創造する思考であるため、明確な正解がない問題に対しても、自ら仮の答えを設定し、思考を進めることができます。目標達成した未来の姿から考えることで、困難なテーマに対してもポジティブに取り組めるのです。

広い視野で思考できる

バックキャスティング思考は未来に軸があるため、現状の課題や利害関係に左右されることなく広い視野で思考することが可能です。

現状の条件や制約を度外視して自由に未来を創造することができ、革新的なアイデアも生まれやすくなります。

また、現在を起点として未来を予測するフォアキャスティング思考よりも、高い目標を設定しやすく、実現するためのアクションを正しく行うことで、より高い成果を得ることも可能です。

バックキャスティング思考のデメリット

正解が見えない問題に前向きに取り組める、広い視野で思考できるなどのメリットがあるバックキャスティング思考ですが、どのようなシーンでも有効な思考方法というわけではありません。

状況によっては別の思考法が有効であるケースもあるため、バックキャスティング思考の向き不向きは事前に把握しておくことが大切です。

ここからは、バックキャスティング思考のデメリットや注意点について解説します。

失敗のリスクが高い

バックキャスティング思考は現状を気にすることなく、不確実な未来の理想を求めるため、失敗するリスクが高くなる可能性があります。未来を起点にしているので、理想が高すぎて実現不可能な誤った選択を取ってしまうことも少なくありません。

また、理想が高すぎることで関係者の理解が得られなかったり、理想の未来像の共有が組織全体に行き渡っていない場合には、結束力が弱まり、目標達成が困難になってしまうケースもあります。

短期的な目標達成には不向き

バックキャスティング思考は、未来の目標を起点として解決策を考えるという時間がかかる方法であるため、短期的・緊急性の高い計画の取り組みには不向きです。

短期的・緊急性の高い計画の立案や目標を達成するためには、現状持ち合わせているリソースから解決策を考えるフォアキャスティング思考が向いています。どちらの思考が現状の課題に適しているかを精査しましょう。

バックキャスティング思考のやり方

バックキャスティング思考は政府の取り組みや企業だけでなく、個人のキャリアプランや理想の人生を実現するためにも役立ちます。具体的なバックキャスティング思考のやり方を下記の4つのステップでみていきましょう。

  1. ゴール・目標の設定
  2. 課題の洗い出し
  3. 目標達成のためのアクションの設定
  4. シナリオ設定と実行

【STEP1】ゴール・目標の設定

現在の状況や実現可能性を一旦捨て「実現したい未来」をイメージし、ゴールや目標を設定しましょう。

このプロセスでは必ず「本当に求める目標」にし、下方修正しないことがポイントです。現在のリソースやこれまでの経験に囚われないことで、革新的なアイデアを創出するきっかけになります。

とはいえ、現実と大きくかけ離れた未来を創造してしまうと失敗するリスクがあるため、社会情勢や市場の動向は最低限考慮することも重要です。

【STEP2】課題の洗い出し

未来に求める姿を設定したら、「現状なぜ実現できていないか」の要因を探り、やるべき課題を洗い出しましょう。

課題の洗い出しには、目標達成までに何が足りていないのかを可視化し「求める未来と現実のギャップ」を把握することが大切です。課題の洗い出しには多面的な見方が重要です。できるだけ多くの人の意見に耳を傾けましょう。

【STEP3】目標達成のためのアクションの設定

ゴール・目標、現状の課題を明確にしたら、目標達成のための具体的なアクションを設定します。実現可能性やかかる時間や都合は一旦考慮せず、自由な発想でできるだけ多くの行動をリストアップしていくことが大切です。

さらに、設定したアクションを以下の3つのカテゴリに分類します。

  • System(仕組み):社会制度・事業形態など
  • Technology(技術):情報機器・アプリケーションなど
  • Value(価値):個人の認識・マインドセットなど

アクションをカテゴリに分類することで、目標達成までにどの要素がどれくらい必要なのかが明確になり、より行動に移しやすくなるでしょう。

【STEP4】シナリオ設定と実行

具体的なアクションが決定したら、いつまでに何をすべきかのシナリオを組んで実行に移します。

アクションを時間軸に沿って整理・配置していくことで、不足しているアクションが見えてきます。それらのアクションを補足したり結合したりすることで、バックキャスティング思考のシナリオはより精度の高いものになります。

完成したシナリオをもとにアクションを一つずつ実行して、「未来になりたい姿・あるべき姿」に近づけていきましょう。

バックキャスティングで高い目標達成を目指そう

バックキャスティング思考とは、中長期的に実現したい「理想とする未来の自分・目標」に近づくために有効な考え方で、自身のキャリアパスを考える際にも用いられます。

最も重要なことは、本当に求めている目標を設定することです。求める目標を下方修正してしまうと、課題の洗い出しや目標達成までのシナリオに齟齬が生じます。

また、バックキャスティング思考は短期的な目標達成には不向きである点にも注意が必要です。現在の状況や達成したいゴールによってフォアキャスティング思考と使い分けながら、理想とする未来の実現に取り組みましょう。

 

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