アンラーニング(学習棄却)とは?メリット・デメリットや、やり方を解説

先行き不透明な現代社会では、環境の変化に適応しながら自らも変化していくことが求められています。このような時代において、個人または企業が継続的な成長を遂げるためには、従来の学習方法だけに留まらず、アンラーニング(学習棄却)の推進が必要不可欠です。

今回は、アンラーニングとはどのような意味を持つのか、推進する際のメリットやデメリット、実践方法について紹介します。アンラーニングを推進したいと考える企業の経営者や、社員の人材育成に関わる方はぜひ参考にしてください。

アンラーニングとは

アンラーニング(unlearning)とは、これまで学んできた仕事の信念やスキル、知識などをいったん捨て、新しく学び直すことを意味する言葉です。「学習棄却」や「学びほぐし」とも呼ばれています。

しかし、既存の知識やスキルを完全に忘れ去るというわけではありません。必要であれば、過去の知識を参照することも可能です。

環境の変化に対応するためには、一方向的に知識を積み上げるだけでなく、従来の知識を捨てることも必要であるという考えがアンラーニングです。

アンラーニングの目的と重要性

アンラーニングの重要性が高まっている背景には、「VUCA時代」と呼ばれる現代社会があります。
VUCAとは、変化が激しく先行きが不透明で、将来予測が困難な状態を指します。
変化が激しく、複雑で先行きが読めないこの時代で生き抜くためには、変化に対応する力が求められています。過去の経験や知識に囚われていては、変化に対応できず、時代に取り残されてしまう可能性もあるでしょう。

既存の知識やスキルを見直し、一部を意図的に停止させるアンラーニングに取り組むことで、絶えず変化し続けるビジネスシーンにおいても対応が可能となります。アンラーニングによって、柔軟性のある人材を成長させることは、組織の継続的成長にもつながるでしょう。

「VUCA」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご参考ください。
★内部リンク「VUCA」

 

学び直し(リカレント)との意味の違い

アンラーニングと類似する言葉に「学び直し(リカレント)」があります。

学び直しとは、現状や将来設計を踏まえて、新しい知識をインプットすることを意味します。

一方で、アンラーニングは、新しく学び直すために、意識的に既存の知識やスキルを忘れることを意味するため、学び直しとは意味が異なります。

アンラーニングと学び直し、どちらも学びに関する言葉ですが、それぞれの意味合いは異なるため、混同しないように注意しましょう。


「学び直し(リカレント)」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご参考ください。

★「学び直し(リカレント)」

企業がアンラーニングを推進するメリット

現代社会において、企業が継続的な成長を遂げるためには、アンラーニングが必要とされています。

しかし、既存の知識やスキルを捨て去ることに、消極的な意見も少なくありません。

アンラーニングに取り組む前には、どのようなメリットが得られるのかを認識しておくと良いでしょう。

ここでは、アンラーニングによって得られる、具体的な下記の3つのメリットについて解説します。

  • 業務の効率化
  • 変化に強い組織への転換
  • 従業員の意識改革と成長

業務の効率化

多くの企業では、長年染み付いている価値観やルールがあり、中には非効率なものも存在するでしょう。アンラーニングは、このような企業の思い込みによる無駄を削減し、新たな発見へとつなげることが可能となります。

たとえば、ルーティン化している従来の業務フローをアンラーニングによって見直すことで、現状に合った効率の良い業務フローへと変更が可能です。

既存業務の見直しによって効率が向上する点は、企業にとって大きなメリットといえます。

変化に強い組織への転換

変化の激しい現代を企業が生き抜くためには、変化を恐れるのではなく、変化に対応できる柔軟性が必要です。従来のルールに固執していては、知らず知らずのうちに時代に取り残されてしまい、個人のみならず、企業の成長も難しいでしょう。

古い考えやルールを捨て去ることで、新しい価値観を積極的に取り入れる姿勢の定着が促されます。変わりゆく時代の変化に対応し、成長し続けることで、企業としての柔軟性が高まり、変化に強い組織への転換も期待できます。

従業員の意識改革と成長

アンラーニングの推進は、従業員の意識改革や成長の促進にも効果的です。

成功体験を持つ従業員ほど、変化の必要性を感じない傾向にあります。しかし、変わりゆく現代社会では、従来のスキルが最適とは限りません。

アンラーニングは、経験値を否定するものではなく、さらなる成長を目指す機会です。新しい価値観の中でこれまでの経験を活かせれば、今までにないサービスの提供や新しいアイデアの誕生も期待できるでしょう。

企業がアンラーニングを推進する際の注意点(デメリット)

業務の効率化や従業員の成長といったメリットが得られるアンラーニングですが、注意すべき点があることも理解しておきましょう。

ここでは、企業がアンラーニングに取り組む際の下記の2つの注意点について解説します。

  • 従業員のモチベーション・パフォーマンス低下のリスク
  • チーム・組織単位で行う難しさ

従業員のモチベーション・パフォーマンス低下のリスク

慣れ親しんだ仕事のスタイルを変えることには不安が伴うため、人によっては、これまで培ってきた経験や学びが否定されていると捉えられる可能性があります。

自分の信念が否定されていると感じることは、従業員のモチベーション低下につながります。新たな手法に慣れるまでは、一時的にパフォーマンスが低下することもあるでしょう。

アンラーニングは自己否定ではなく、成長のために必要な変化であることをしっかりと説明し、従業員の理解を得ることが重要です。

チーム・組織単位で行う難しさ

個人でアンラーニングに取り組んでしまうと、周囲との連携が上手くいかなくなったり、一人にだけ大きなストレスがかかったりする可能性があります。このため、アンラーニングはチーム単位または組織単位で行うのが基本です。

一方で、新しい価値観を敬遠する保守的な組織では、アンラーニングが行いづらい傾向があります。

このような組織では、リーダーが中心となり、少しずつ意識を変えていくことが大切です。

たとえば、社会の変化によって有効性が低下した仕事をきっかけにし、現状把握や課題意識を共有することからはじめると良いでしょう。

アンラーニングの実践方法

アンラーニングの取り組みを検討しているものの、どのように実施すべきなのかと悩む方も多いでしょう。アンラーニングは闇雲に進めるのではなく、順序立てて推進すべきです。

ここでは、アンラーニングの実践方法を下記の3つのステップで解説します。自社の導入時に参考にしてください。

  1. 従業員一人ひとりの内省(リフレクション)
  2. 知識や価値観の取捨選択
  3. 新しい学びや気づきの獲得

【STEP1】従業員一人ひとりの内省(リフレクション)

アンラーニングに取り組む過程で、まず行うべきなのが、従業員一人ひとりの内省です。

内省とは、自分自身の心と向き合い、考えや行動について客観的な視点から振り返ることです。誤りを指摘することが目的ではなく、批判的な意味は含まれない点を留意しておきましょう。

アンラーニングは、自らの知識やスキルが古いものであることを自覚することからはじまります。自身が置かれている状況に危機感を持ち、アンラーニングの重要性を認識することで、効果的な活動になります。

【STEP2】知識や価値観の取捨選択

内省によって認知した自分の知識や価値観を見つめ直し、時代や他者の価値観と照らし合わせながら、捨てるべきものと守るべきものに取捨選択を行います。同時に、自分が持っているこだわりや思い込みについても整理しましょう。

このステップは、アンラーニングで最も重要とされています。一人で判断することが難しいため、上司やチームメンバーがサポートし、フィードバックし合うと良いでしょう。

【STEP3】新しい学びや気づきの獲得

個人での振り返りや取捨選択を行うと共に、新しい学びや気づきを獲得することも、アンラーニングの推進に効果的です。

個人での学びには限界があるため、企業は新しい学びや気づきを獲得できる場を設け、従業員に提供すると良いでしょう。異なる部署や幅広い年代の人と交流し、新しい価値観に触れることにより、アンラーニングは推進しやすくなります。

社内で交流する機会がない場合は、研修サービスやビジネス交流会など、外部イベントを活用するのもおすすめです。

アンラーニングで人と企業の成長を実現しよう

アンラーニングは、既存の知識やスキルをいったん捨てる必要があるため、受け入れることが難しいと感じることも多いものです。すべてを一度に変えようとするのではなく、従業員の意識改革から始めることが成功の秘訣です。企業や上司がチームをサポートし、組織単位で推進しましょう。

変化の激しい現代社会に対応するためにも、アンラーニングで個人と企業の成長を目指しましょう。

 

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