セレンディピティとは?意味や例、ビジネスでのメリットなどを解説

「セレンディピティ」は、偶然の産物やそれを発見する能力を表す言葉です。科学の世界でよく使用されている言葉ですが、近年はビジネスの世界でも注目が集まり、ビジネス書やネットでも見かける頻度が多くなりました。

本記事ではセレンディピティの由来や例をはじめ、ビジネスにおけるメリットを詳しく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

セレンディピティとは

「セレンディピティ(Serendipity)」とは、「思いがけずに有益な発見をすること」または「その能力を行使すること」を意味する言葉です。偶然の産物そのものだけではなく、発見につながる出来事に気付くための能力(知識や洞察力)もセレンディピティに含まれます。

セレンディピティはイギリスの政治家・小説家のホレス・ウォルポール(1717-1797)による造語です。「セレンディップの三人の王子たち」というおとぎ話が言葉の由来とされています。

この物語は、3人の王子たちが旅先で思いがけない出来事に遭遇し、結果として幸運をもたらすというあらすじです。ウォルポールは王子たちの「偶然に出会う能力」をセレンディピティと定義付けています。

シンクロニシティとの意味の違い

セレンディピティと似ている言葉に「シンクロニシティ」があります。シンクロニシティは「意味のある偶然の一致」を意味しており、因果関係のない出来事が同時に起こることを指します。

セレンディピティとは違い、シンクロニシティは偶然の出来事そのものを表しているため、そこから何かを発見するという主体的な意味は含まれていません。

セレンディピティの例

私たちが普段使用している商品やサービスの中にも、セレンディピティがきっかけで誕生したものが多くあります。ここでは、過去にセレンディピティによって生み出された下記5つの例を紹介します。

  • ポストイット
  • ポテトチップス
  • 電子レンジ
  • 万有引力の法則
  • ペニシリン

ポストイット

さまざまな場所に貼ってはがせる付箋「ポストイット」はセレンディピティから生み出された商品です。科学者であるスペンサー・シルバーは、接着剤の研究をしている際に粘着力の弱い製品を作ってしまいました。この失敗作から「はがすことが可能な性質」を発見します。

さらにもう一人の科学者アート・フライが楽譜からしおりが落ちる様子を見て、シルバーが発見した接着剤をしおりに利用できるのではないかとひらめきます。2人は協力し、貼ったりはがせたりするメモ・ノート(ポストイット)を開発しました。

参考:Post-it「ポスト・イット® ブランドについて」

ポテトチップス

「ポテトチップス」の開発もセレンディピティによるものといえるでしょう。

ポテトチップスは1853年、アメリカのムーン・レイク・ハウスホテルが発祥の地とされています。顧客から「フレンチフライを厚く切りすぎだ!」と言われたコック長は、ポテトを紙のように薄く切って固くなるまで揚げたそうです。

このときに偶然完成したポテトチップスはアメリカで多くの人々に広まり、昭和50年からは日本でも販売され、人気商品となっています。

参考:Calbee「ポテトチップス」

電子レンジ

「電子レンジ」が発明されたのは、アメリカのレイセオン社のパーシー・スペンサー博士(1894-1970)によるセレンディピティがきっかけです。

 

スペンサー博士は軍事用レーダーの研究中に、自分のポケットに入れていたチョコレートが柔らかくなっていることに気が付きます。その理由を調べる中でレーダー用の超音波が食品を加熱することを発見し、長年の実験や研究開発の結果、電子レンジが生まれました。

参考:一般社団法人日本電機工業会「電子レンジ誕生のきっかけ」

万有引力の法則

イギリスの科学者アイザック・ニュートン(1642-1727)は、1665年に「万有引力の法則」を発見しました。これはニュートンが自宅の庭で、木からリンゴが落ちる様子を見て「なぜ横や上ではなく下に落ちたのか」という疑問を抱いたことがきっかけといわれています。

この逸話は、偶然の出来事とニュートンの気づきの能力がもたらしたセレンディピティといえるでしょう。

ペニシリン

セレンディピティの代表的な事例として、伝染病の治療薬「ペニシリン」の発見があります。

イギリスの細菌学者であるアレクサンダー・フレミング(1881-1955)は、ブドウ球菌の研究中にくしゃみをしてしまい、細菌を培養するシャーレの上に青カビを発生させてしまいます。

しかしこの偶然から、青カビの周りでは細菌が繁殖しないことを発見し、抗生物質であるペニシリンの抽出に成功しました。

ビジネスにおけるセレンディピティのメリット

ビジネスの世界では一般的には必然性が重要視されますが、近年は社会情勢の変化などを理由にセレンディピティによる偶然性が求められています。

ここからはビジネスにおけるセレンディピティの下記3つのメリットを解説します。

  • イノベーションの創出につながる
  • 新しいアイデアや解決策の発見ができる
  • 事業の安定・成長につながる

イノベーションの創出につながる

「電子レンジ」や「ペニシリン」などの事例からも分かる通り、セレンディピティはときに従来の常識を覆すような新たな発見・開発をもたらします。

 

社会に大きな影響を与えるようなイノベーションの創出によって、競合他社との差別化や市場での優位性の獲得につながるでしょう。

新しいアイデアや解決策の発見ができる

ビジネス市場は変化が激しいため、「新商品やサービスの開発」「シェアの拡大」など企業の課題は多岐に渡ります。保守的にならず、新たなチャレンジを行うことで発見の可能性が広がるのです。

セレンディピティは思いがけない偶然の出来事から、新たな一面の発見や問題解決の糸口に気付ける点がメリットです。

事業の安定・成長につながる

現在は社会情勢がめまぐるしく変化する「VUCA時代」といわれており、将来の見通しが難しくなっています。先行きが不透明な状況で、事業を安定・成長させていくためには、これまでの常識にとらわれずに考えることが求められます。

 

経営戦略にセレンディピティを活用することにより、新たな戦略を模索できるようになるでしょう。

セレンディピティを起こすために重要なこと

セレンディピティを起こすためには受け身ではなく、行動し、気付き、新たな価値観を受け入れる姿勢が重要だといわれています。ここからは、具体的な行動や心構えを4つ解説します。

  • 幅広い分野に興味・関心を持つ
  • 多様な価値観に触れる
  • ポジティブに考える
  • 自分の考えを発信する

幅広い分野に興味・関心を持つ

さまざまな分野に興味・関心を持って行動することで視野が広がり、セレンディピティに出会いやすくなります。

日常生活でふと感じた疑問について調べてみる、いつもとは異なるお店に入ってみる、普段は手に取らない雑誌を読んでみるなど、小さな行動から変えてみましょう。知らなかった情報に触れることで、新たな発見があるかもしれません。

多様な価値観に触れる

さまざまな価値観を持つ人と関わることで、自分では思いつかないような斬新なアイデアを得られる場合があります。自分とは価値観が合わないと感じている人とあえて話してみる、世代の異なる人と食事に行くなどの行動を起こしてみましょう。

自分の考えに固執せず、幅広い意見を受け入れる姿勢がセレンディピティにつながります。

ポジティブに考える

「ポストイット」や「ペニシリン」の例のように、セレンディピティは失敗から生まれることも少なくありません。一見マイナスに感じる出来事も、ポジティブに考えることで新たな視点を得られる可能性もあるでしょう

常にポジティブな姿勢で物事に取り組んでいると、偶然の出来事を見逃さずに発見できるようになります。

自分の考えを発信する

自分の考えを周囲の人に発信することも有効です。世界中の人とつながることのできるブログやSNSは「セレンディピティエンジン」とも呼ばれるツールです。

SNSでは返信・DM機能などから第三者との意見交換ができるため、新しいアイデアや異なる視点で物事を考えられるようになります。思いがけない相手とつながることもあるでしょう。

SNSの積極的な活用によって、セレンディピティを起こす可能性が広がります。

セレンディピティには世の中を変える力がある

セレンディピティは偶然の産物を発見する能力のことです。万有引力の法則やペニシリンの発見のように、セレンディピティには世の中を変える力があります。

変化の激しい現代において、企業や個人が存続・成長していくためには、イノベーションの創出を期待できるセレンディピティの活用が有効です。

幅広い分野に関心を持つ、多様な価値観に触れるといった行動をとり、セレンディピティを呼び込むアンテナを立てた働き方を意識してみてはいかがでしょうか。




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